襦子
襦子
名詞
標準
文例 · 用例
希臘商人が自転車で忙がしく商取引所方面に疾走し出すころ、マダム・レムブルグが瀝青の浮いた黒襦子の着物をつけて朝のミルクのなかで接吻をすると、海峡を船脚|迅く航行する汽艇、陳独秀が汕頭に行く姿を指さすのであった。
— 吉行エイスケ 『地図に出てくる男女』 青空文庫
希臘商人が自転車で忙がしく商取引所方面に疾走し出すころ、マダム・レムブルグが瀝青の浮いた黒襦子の着物をつけて朝のミルクのなかで接吻をすると、海峡を船脚迅く航行する汽艇、陳独秀が汕頭に行く姿を指さすのであった。
— 吉行エイスケ 『地図に出てくる男女』 青空文庫
日が経って医王山へ花を採りに、私の手を曳いて、楼に朱の欄干のある、温泉宿を忍んで裏口から朝月夜に、田圃道へ出た時は、中形の浴衣に襦子の帯をしめて、鎌を一挺、手拭にくるんでいたです。
— 泉鏡花 『薬草取』 青空文庫
肉色縮緬の長襦袢で、其の白襦子の伊達卷を――そんなに傍へ寄つちや不可ない。
— 泉鏡太郎 『深川淺景』 青空文庫
幾度水に潜ツたかと思はれる銘仙の袷に、新しい毛襦子の襟をかけて、しやツきりした姿致で長火鉢の傍に座ツてゐるところは、是れが娘をモデルに出す人柄とは思はれぬ。
— 三島霜川 『平民の娘』 青空文庫
そのなかには、栄子がはじめて良人や子供と捨三を訪問したとき締めてゐた、黒襦子に草花の刺繍のある帯などがあつた。
— 徳田秋聲 『質物』 青空文庫
紺縮の単物に、黒襦子と茶献上との腹合せの帯を締めて、繊い左の手に手拭やら石鹸箱やら糠袋やら海綿やらを、細かに編んだ竹の籠に入れたのを懈げに持って、右の手を格子に掛けたまま振り返った女の姿が、岡田には別に深い印象をも与えなかった。
— 森鴎外 『雁』 青空文庫
お玉は小さい紙入を黒襦子の帯の間から出して、幾らか紙に撚って女中に遣って置いて、駒下駄を引っ掛けて、格子戸の外へ出た。
— 森鴎外 『雁』 青空文庫