空無
くうむ
名詞
標準
文例 · 用例
そうしてまた、流転、無常を差別相の形式と見、空無、涅槃を平等相の原理とする仏教の世界観、悪縁にむかって諦めを説き、運命に対して静観を教える宗教的人生観が背景をなして、「いき」のうちのこの契機を強調しかつ純化していることは疑いない。
— 九鬼周造 『「いき」の構造』 青空文庫
「空無の味」のうちに「わが心、諦めよ」とか、「恋ははや味わいをもたず」とか、または「讃むべき春は薫を失いぬ」などの句がある。
— 九鬼周造 『「いき」の構造』 青空文庫
思想も、神經も、感情も、そしてこの自我の意識する本體すらも、空無の中に消えてしまふ。
— 萩原朔太郎 『宿命』 青空文庫
詩という言語を拡大して、こんな風にまで広茫とひろげて行ったら、遂に詩の外延は無限に達し、内容のない空無の中でノンセンスとして消滅せねばならないだろう。
— 萩原朔太郎 『詩の原理』 青空文庫
これより先に延びて行くことは、詩という言語を空無の中に無くしてしまう。
— 萩原朔太郎 『詩の原理』 青空文庫
思想も、神経も、感情も、そしてこの自我の意識する本体すらも、空無の中に消えてしまふ。
— 萩原朔太郎 『散文詩集『田舎の時計 他十二篇』』 青空文庫
われの認識は空無にしてわれの所有は無價値に盡きたり。
— 萩原朔太郎 『氷島』 青空文庫
ところで音楽批評家はといふと、「どうだ、夜の絵は――さう日光の御厄介ばかりならんで」なぞと画家に云ふ画家の叔父さんみたいな思ひ付きを並べるか、(まあその叔父さんなんざあ甥に親愛を感じて云つたのだからまあまんざら空無ではないがね。
— 中原中也 『音楽と世態』 青空文庫