束の間
つかのま
名詞
標準
文例 · 用例
駒ヶ岳の麓、台ヶ原の客舎に昼餐を了りたる束の間に、禿筆を舐ぶりて偶感を記す、その文を成さざる、冀くは我が興の高きを妨ぐるなからむ。
— 小島烏水 『山を讃する文』 青空文庫
電車の内はからりとして、水に沈んだ硝子函、車掌と運転手は雨にあたかも潜水夫の風情に見えて、束の間は塵も留めず、――外の人の混雑は、鯱に追われたような中に。
— 泉鏡花 『妖術』 青空文庫
一度|詣でたらんほどのものは、五十里、百里、三百里、筑紫の海の果からでも、思いさえ浮んだら、束の間に此処に来て、虚空に花降る景色を見よう。
— 泉鏡花 『春昼』 青空文庫
この世の中のひとりでも不幸な人のいる限り、自分も幸福にはなれないと思う事こそ、本当の人間らしい感情でしょうに、自分だけ、あるいは自分の家だけの束の間の安楽を得るために、隣人を罵り、あざむき、押し倒し、(いいえ、あなただって、いちどはそれをなさいました。
— 太宰治 『貨幣』 青空文庫
その喜びも束の間であった。
— 太宰治 『古典風』 青空文庫
その後いよいよ御静養のことと思い安心しておりましたところ、風のたよりにきけば貴兄このごろ薬品注射によって束の間の安穏を願っていらるる由。
— 太宰治 『虚構の春』 青空文庫
男子誕生の喜びも束の間、いまはラプンツェルの意味不明の衰弱に、魂も動転し、夜も眠れず、ただ、うろうろ病床のまわりを、まごついているのです。
— 太宰治 『ろまん燈籠』 青空文庫
束の間の閃光が私の生命を輝かす。
— 梶井基次郎 『筧の話』 青空文庫