撫で
なで
名詞
標準
文例 · 用例
民子は僕に包を渡してからは、自分の手のやりばに困って胸を撫でたり襟を撫でたりして、下ばかり向いている。
— 伊藤左千夫 『野菊の墓』 青空文庫
父の一昨年うせたる時も、母の去年うせたる時も、心からの介抱に夜るも帯を解き給はず、咳き入るとては背を撫で、寐がへるとては抱起しつ、三月にあまる看病を人手にかけじと思し召の嬉しさ、それのみにても我れは生涯大事にかけねばなるまじき人に、不足らしき素振のありしか。
— 樋口一葉 『軒もる月』 青空文庫
みよ すべての美しい寢臺の中で 娘たちの胸は互にやさしく抱きあふ心と心と手と手と足と足とからだとからだとを紐にてむすびつけよ心と心と手と手と足と足とからだとからだとを撫でることによりて慰めあへよこのまつ白の寢臺の中ではなんといふ美しい娘たちの皮膚のよろこびだなんといふいぢらしい感情のためいきだ。
— 萩原朔太郎 『青猫』 青空文庫
結局それは、夫人の強硬な反対によって中止されたが、後でそれが有名な化物屋敷と解った時、夫人がほッと胸を撫でおろしたとは反対に、ヘルンは大変失望して、『ですからなぜ、あの家住みませんでしたか。
— 室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ 『小泉八雲の家庭生活』 青空文庫
それを見る人はその枝の一本々々をしみ/″\と撫でゝやりたくなるだらう。
— 有島武郎 『春』 青空文庫
彼れの手は冷たい死體の皮膚を蠅を追ひながらあちらこちら撫でまはした。
— 有島武郎 『實驗室』 青空文庫
腕はその儘、頭だけを屈めてサラリと禿げかゝりのそれを撫でた。
— 中原中也 『医者と赤ン坊』 青空文庫
「困つたものだ……」 再び今の様に頭を撫でるから繰返して、不図頭を上げた時さう思つた。
— 中原中也 『医者と赤ン坊』 青空文庫