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懐かし味

なつかしあじ
名詞
1
標準
文例 · 用例
彼はこういう風に気のおける田口と反対の側に、何でも遠慮なく聞いて怒られそうにない、話し声その物のうちにすでに懐かし味の籠ったような松本を想像してやまなかった。
夏目漱石 彼岸過迄 青空文庫
日が暮れかかって、このさびしい野原のまん中を唯ひとりで行くよりも、路連れのある方が気丈夫であると思ったのと、もう一つには僕の祖母がふだんからこの尼を尊敬して、尼が托鉢に来るときには必らず幾らかの米か銭かをやるのを見馴れているので、僕も尼に対しては一種の敬意と懐かし味とをもっているためであった。
岡本綺堂 探偵夜話 青空文庫
そのあいだに何遍頭の中で繰り返したか知れない、「呉一郎」という名前に対して「これが自分の名前だ」というような懐かし味や親しみが微塵ほども感ぜられなかった。
夢野久作 ドグラ・マグラ 青空文庫
工業学校を出てから凡そ三年の間、この炭坑で正直一途に小頭の仕事を勤めて来たお蔭で、今では地の底の暗黒にスッカリ慣れ切って、自分の生れ故郷みたような懐かし味をさえ感じていたばかりでなく、生れ付き頭が悪いせいか、かなり危険な目に会っても無神経と同様で、滅多に感傷的な気持になった事はないのであった。
夢野久作 斜坑 青空文庫