平押し
ひらおし
名詞
標準
文例 · 用例
どこから集まって来たか知らないが、無数の人間が三方から真黒に押寄せて来て、一方のピカデリー・サアカスの方角へ平押しに押してゆく。
— 岡本綺堂 『倫敦の一夜』 青空文庫
それからのべつ平押しにここまでやって来たようなものの、こうやたらに松ばかり並んでいては歩く精がない。
— 夏目漱石 『坑夫』 青空文庫
勿論、演壇または青天井の下で山犬のように吠立って憲政擁護を叫ぶ熱弁、若くは建板に水を流すようにあるいは油紙に火を点けたようにペラペラ喋べり立てる達弁ではなかったが、丁度甲州流の戦法のように隙間なく槍の穂尖を揃えてジリジリと平押しに押寄せるというような論鋒は頗る目鮮ましかった。
— 内田魯庵 『二葉亭余談』 青空文庫
畫伯がのこされた歌集「寒竹」をひらいて讀んでゆくと、明治四十年の條に「故園春雪」と題して五首の歌が選まれてあるが、そのなかの一首に春河の雪解の出水平押しに溢れ漲ぎる國移るべくの歌に出會ふのである。
— 今井邦子 『雪解水』 青空文庫
春河の雪解水ではあるけれど、その勢は平押しに溢れ漲つて國をも押し流してしまふ程の力をひそめてゐる、さうした大自然の威力にまで入感し、水の勢を見てをられるのである。
— 今井邦子 『雪解水』 青空文庫
と、見ると、火の手は、南進していたものが一転して東方に向って平押しに押し込んで、大通りに向う横町という横町へ、長蛇の走るよりも迅い勢いで吹き出して来た。
— 浅草の大火のはなし 『幕末維新懐古談』 青空文庫
もっと平押しにゆかないか、そう考えて居ります。
— 一九三九年(昭和十四年) 『獄中への手紙』 青空文庫
何でも平押しにぐいぐい押しつけて行く所がある。
— 芥川龍之介 『江口渙氏の事』 青空文庫