廃跡
はいあと
名詞
標準
文例 · 用例
それが裏街の芥捨場や、雑草の生える埋立地で、詩人の心を低徊させ、人間生活の廃跡に対する或る種の物侘しい、人なつかしい、晩春の日和のような、アンニュイに似た孤独の詩情を抱かせるのである。
— 萩原朔太郎 『郷愁の詩人 与謝蕪村』 青空文庫
時に野外や近郊を歩くときでも、彼はなお目前の自然の中に、転寝の夢に見る夢を感じて古寺やほうろく捨る芹の中 と、冬日だまりに散らばう廃跡の侘しさを咏むのであった。
— 萩原朔太郎 『郷愁の詩人 与謝蕪村』 青空文庫
例えば小督局の廃跡を訪うて咏んだという句、うきふしや竹の子となる人の果 の如きも、理解のない鑑賞で見る限りは、単なる観念的の俳句であって、子規のいわゆる月並臭の駄句にしか感じられない。
— 萩原朔太郎 『郷愁の詩人 与謝蕪村』 青空文庫
廃跡に残る一つの印象、変化と荒廃の中に残る一つの生命。
— 萩原朔太郎 『郷愁の詩人 与謝蕪村』 青空文庫
それらは今日全くの廃跡である。
— 宮本百合子 『女靴の跡』 青空文庫
住む二階を観潮楼と名づけた、その家と庭との工合からも、勢よく上にはねた髭をつけた鴎外の顔は、果もない下町の廃跡に向って立っている。
— 宮本百合子 『田端の汽車そのほか』 青空文庫
けれども今はもうすっかり廃跡になって、崩れた舞踏場の傍に、小さい小屋掛けをした老人の山番が、犬を一匹友達にして棲んで居る限りでございます。
— 宮本百合子 『C先生への手紙』 青空文庫
頂上には、其等の廃跡の外に、一軒不思議な建物があるそうでございます。
— 宮本百合子 『C先生への手紙』 青空文庫