火打ち
ひうち
名詞
標準
文例 · 用例
そうして、その引き出しの中には、もぐさや松脂の火打ち石や、それから栓抜きのねじや何に使ったかわからぬ小さな鈴などがだらしもなく雑居している光景が実にありありと眼前に思い浮かべられる。
— 寺田寅彦 『藤棚の陰から』 青空文庫
それからまた、ちょっと見ると火打ち石のように見える堅緻で灰白色で鋭い稜角を示したのもあるが、この種のものであまり大きい破片は少なくもこのへんでは見当たらない。
— 寺田寅彦 『小浅間』 青空文庫
「これこそ南蛮渡来の油薬、とくとごろうじませい」 叫びつつ火打ち石取り出して、五体かまわずに切り火を散らし放ったかと見えるや、全身たちまちぱっと火炎に包まれました。
— 献上博多人形 『右門捕物帖』 青空文庫
やがて火打ちの音がやむと、お時の手を合わせている姿が火の前にぼんやりと浮き出した。
— 岡本綺堂 『箕輪心中』 青空文庫
その時折よく通り合わせたのは、老いたる一人の猟師であったが、彼を猪小屋へ担ぎ込むと、火打ち袋から丸薬を取り出し、まず水の中へ抛り込んだ。
— 国枝史郎 『神州纐纈城』 青空文庫
あたしが憎けりゃ突くなり斬るなり勝手におしよ――それより、どなたか火打ちを?
— 乾雲坤竜の巻 『丹下左膳』 青空文庫
かじかんだ手で火打ちを擦る。
— 乾雲坤竜の巻 『丹下左膳』 青空文庫
どりゃ、そうと決まれば、こっちもそろそろ受持ちの飯炊きにとりかかろうかい」 ひとりごちながら、火打ちを切って手近の行燈に灯を入れる。
— 乾雲坤竜の巻 『丹下左膳』 青空文庫