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幾十

いくじゅう
名詞
1
標準
文例 · 用例
しかしてどこから見ても、神河内を統御する大帝は穂高岳で、海抜五千七百尺の神河内から聳ゆること更に五千尺に近く、梓の濶流も、支線の小峡流も、その間の幾十反の点々たる平地も、何もかも一切包まれた谷は、神つ代の穂高見の命の知ろし召す世界である。
小島烏水 梓川の上流 青空文庫
蝶ヶ岳から短沢へ下りて来た自分は、先ずこの清い流れに嗽ぎもし、頭も洗い、顔も拭いた、気が遠くなるような悪臭の蕕草を掻き分けたことや、自分の肩から上を気圏のように繞ぐっていた蚋の幾十|陣団やに窒息するかと苦しんだことも、夢の谷へ下りては、夢のように消えて、水音は清々しい。
小島烏水 梓川の上流 青空文庫
自然は富士山という一つの題材を、幾十百部に切り刻んで、相模野からかけて、武蔵野辺に住む人たちに朝となく、夕となく、種々の相を示してくれる。
小島烏水 雪中富士登山記 青空文庫
恁の如き風雲は、加能丸既往の航海史上珍しからぬ現象なれども、(一人坊主)の前兆に因りて臆測せる乘客は、恁る現象を以て推すべき、風雨の程度よりも、寧ろ幾十倍の恐を抱きて、渠さへあらずば無事なるべきにと、各々我命を惜む餘に、其死を欲するに至るまで、怨恨骨髓に徹して、此の法華僧を憎み合へり。
泉鏡花 旅僧 青空文庫
そして、後の歎は、前の喜びにくらべまして、幾十層倍だったでございましょう。
泉鏡花 海神別荘 青空文庫
たといこの上幾十倍のつらい悲しいことがあっても、きっと堪えて死にゃあしないわ。
泉鏡花 化銀杏 青空文庫
さりながら、諸君より十層二十層、なお幾十層、ここに本意なき少年あり。
泉鏡花 化銀杏 青空文庫
婦人の意地と、張とのために、勉めて忍びし鬱憤の、幾十倍の勢をもって今満身の血を炙るにぞ、面は蒼ざめ紅の唇|白歯にくいしばりて、ほとんどその身を忘るる折から、見遣る彼方の薄原より丈高き人物|顕れたり。
泉鏡花 琵琶伝 青空文庫