綿入り
わたいり
名詞
標準
文例 · 用例
」園子はやがて新しく仕立てた木綿入りの結城縞を、老人の前に拡げた。
— 黒島傳治 『老夫婦』 青空文庫
失恋は爺さんにとつて綿入りの外套のやうに、少し目方が重過ぎたやうだ。
— 大正七(一九一八)年 『茶話』 青空文庫
二月二十三日定京洛寒徹骨の詩を見たまひて、須磨伯父上わざわざ真綿入りの股引きを郵送され、今また遠くより木炭を持たせて使を寄越されたれば、痛み入りつつ、礼状のはしに書きつけし一首揀得幽居寄老身 幽居を揀び得て老身を寄す、門前掃迹馬蹄塵 門前迹を掃ふ馬蹄の塵。
— 河上肇 『閉戸閑詠』 青空文庫
りよは青い波模様の、着物地でつくつたワンピースに、これも綿入りの薄茶の背広の上着を着て、何となくおめかしをして留吉の手を引いてゐた。
— 林芙美子 『下町』 青空文庫
二番めのわがおもふどちは、おれの仲よしだといふくらゐの意味で、おれだつて虱とおんなじことだ、とまるで、綿入りの着物の縫ひめに、頭をつゝこんで縮かんでゐる虱ばかりを笑ふことは出來ないといふのです。
— 折口信夫 『歌の話』 青空文庫
綿入り二枚分と、胴着と襦袢……赤んぼには麻の葉の模様を着せるものだそうだから」……彼女は枕元で包みをひろげて、こう自分に言って聞かせた。
— 葛西善蔵 『死児を産む』 青空文庫
写真も撮さなければ記録も取らない、至って暢気な山旅ではあり、支度といえば単物に脚袢草鞋、荷物といっても着換の単物二、三枚にシャツ一、二枚、それに寒さの用意として真綿入りの筒袖襦袢二枚、それを油紙に包んで振分けにして肩に掛けた身軽さの為か、ゆっくり歩く積りでもいつか急ぎ足になってしまう。
— 木暮理太郎 『北岳と朝日岳』 青空文庫
繻子と云っても綿入りの繻子でしたが、羽織も着物も全体が無地の蝦色で、草履の鼻緒や、羽織の紐にまで蝦色を使い、その他はすべて、半襟でも、帯でも、帯留でも、襦袢の裡でも、袖口でも、※でも、一様に淡い水色を配しました。
— 谷崎潤一郎 『痴人の愛』 青空文庫