梳
梳
名詞
標準
文例 · 用例
母の頭から、――それでなくても少い髪だのに、梳が落ちかけててる、向ふに行く後姿をみ送る時、彼は梳のことを注告しようかとも思つたが、それさへ情なくつて出来なかつた。
— 中原中也 『分らないもの』 青空文庫
栂、樅、唐檜、白樺などは、山の崕に多く、水辺には、川楊や、土俗、水ドロの木などが、疎に、翠の髪を梳っている。
— 小島烏水 『白峰山脈縦断記』 青空文庫
最初、お照が髪を梳いて抜毛を丸めて、無雑作に庭に投げ捨て、立ち上るところがありますけれど、あの一行半ばかりの描写で、お照さんの肉体も宿命も、自然に首肯出来ますので、思わず私は微笑みました。
— 太宰治 『風の便り』 青空文庫
中津はひげ面のひげを青く剃り、稍々ちゞれる癖のある、ほこりをかむった渦まける髪をきれいに梳って、油の臭いをプンプンさしていた。
— 黒島傳治 『武装せる市街』 青空文庫
皮膚は蒼白に黄味を帯び、髪は黒に灰色交じりの梳らない団塊である。
— 寺田寅彦 『アインシュタイン』 青空文庫
地の透く髪を一筋|梳に整然と櫛を入れて、髯の尖から小鼻へかけて、ぎらぎらと油ぎった処、いかにも内君が病身らしい。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
ここで梳る柳の髪は長かろう、その姿見の丈が高い。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
出来ないことはありますまい、親もなし、兄弟もなし、行く処と云えば元の柳橋の主人の内、それよりは肴屋へ内弟子に入って当分|梳手を手伝いましょう。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫