酔剤
よいざい
名詞
標準
文例 · 用例
念を推して、「それではよろしゅうございますね」「何かい、痲酔剤をかい」「はい、手術の済みますまで、ちょっとの間でございますが、御寝なりませんと、いけませんそうです」 夫人は黙して考えたるが、「いや、よそうよ」と謂える声は判然として聞こえたり。
— 泉鏡花 『外科室』 青空文庫
痲酔剤は譫言を謂うと申すから、それがこわくってなりません。
— 泉鏡花 『外科室』 青空文庫
貴様は定めし不思議なことと思って居るでしょうが、実は世間に有りふれたことで、苦悩を忘れたさの魔酔剤に用いて居るのです。
— 国木田独歩 『運命論者』 青空文庫
そういう場合にはきっと、その発明者が素人であるという事自身が、その発明が専門家の発明よりも立派なものであることを証明するかのごとき錯覚を起こさせるような麻酔剤が記事の行文の間に振りかけられている。
— 寺田寅彦 『ジャーナリズム雑感』 青空文庫
氏の芸術は一箇の麻酔剤であり、阿片であるともいえよう。
— 中島敦 『鏡花氏の文章』 青空文庫
他の部分の接合に於いては、麻酔剤によって仮死体とはなっていても、脳細胞と神経とが麻痺しているだけで、血液は依然として流動しているのであるから、麻酔剤の消耗と同時に、脳細胞の活動も神経系統の活動も開始するわけであるが、頭部と胴体との接合に於いてはそれが無いのである。
— 佐左木俊郎 『三稜鏡』 青空文庫
麻酔剤によって活動を中止されている上に、血液の循環を遮断されて、脳細胞が果して生きているか何うかである。
— 佐左木俊郎 『三稜鏡』 青空文庫
麻酔剤によって仮死の状態に置かれてある人体は、首を切断されたまま、恰も泥人形の首が※げたように、何うしてももう附着しなかった。
— 佐左木俊郎 『三稜鏡』 青空文庫