衙
衙
名詞
標準
文例 · 用例
しかしこれはむろん省かなくてはならぬ、なぜならば我々は農商務省の官衙が巍峨として聳えていたり、鉄管事件の裁判があったりする八百八街によって昔の面影を想像することができない。
— 国木田独歩 『武蔵野』 青空文庫
もっとも向う河岸の官衙の裏河岸を見るとかなり立派な役人達で呑気そうに見物しているのも大勢居た。
— 寺田寅彦 『雑記(2)』 青空文庫
物質だけを取扱う官衙とちがって、単なる物質でない市民乗客といったようなものを相手にする電気局は、乗客の感情まで考えなければならず、そして局の仕事が市民に及ぼす精神的効果までも問題にしなければならないから難儀であろう。
— 寺田寅彦 『雑記(1)』 青空文庫
彼女の横顔が官衙と銀行と、店舗のたちならんだ中央街の支那ホテルのまえまでくると細かく顫えた。
— 吉行エイスケ 『女百貨店』 青空文庫
暗い冷たい石造の官衙の立ち並んでいる街の停留所。
— 梶井基次郎 『冬の日』 青空文庫
淡水魚の、養殖とか漁獲とか製品保存とかいう、専門中でも狭い専門に係る研究なので、来ている研究生たちは、大概就職の極っている水産物関係の官衙や会社やまたは協会とかの委託生で、いわば人生も生活も技術家としてコースが定められた人たちなので、朴々としていずれも胆汁質の青年に見えた。
— 岡本かの子 『金魚撩乱』 青空文庫
ある人はこれを官衙の門衛のようだと言ったが、自分もどちらかと言えば多少そんな気がしないでもない。
— 寺田寅彦 『丸善と三越』 青空文庫
官衙や商社における組織や行政の不備や吏員の怠慢に対しても犀利な批評と痛切な助言を加えたい。
— 寺田寅彦 『一つの思考実験』 青空文庫