磯馴
そなれ
名詞
標準
Japanese garden juniper
文例 · 用例
療養院の前庭の千本ばかりのひくい磯馴松がいちやうに雪をかぶり、そこからおりる三十いくつの石の段々にも、それへつづく砂濱にも、雪がうすく積つてゐた。
— 太宰治 『道化の華』 青空文庫
磯馴松は一樹、一本、薄い枝に、濃い梢に、一ツずつ、翠、淡紅色、絵のような、旅館、別荘の窓灯を掛連ね、松露が恋に身を焦す、紅提灯ちらほらと、家と家との間を透く、白砂に影を落して、日暮の打水のまだ乾かぬ茶屋の葭簀も青薄、婦の姿もほのめいて、穂に出て招く風情あり。
— 泉鏡花 『浮舟』 青空文庫
奥座敷上段の広間、京間の十畳で、本床附、畳は滑るほど新らしく、襖天井は輝くばかり、誰の筆とも知らず、薬草を銜えた神農様の画像の一軸、これを床の間の正面に掛けて、花は磯馴、あすこいらは遠州が流行りまする処で、亭主の好きな赤烏帽子、行儀を崩さず生かっている。
— 泉鏡花 『湯女の魂』 青空文庫
そこには潮風に枝葉を吹き撓められた磯馴松が種種な恰好をして生えておりました。
— 田中貢太郎 『宇賀長者物語』 青空文庫
樹がみな古く、且つ磯馴松と見えぬ眞直ぐな幹を持ち、一樣に茂つた三四町の廣さを保つてずつと西三里あまり打ち續いて田子の浦に終つてゐるのである。
— 駿河灣一帶の風光 『樹木とその葉』 青空文庫
あたりは一面の砂地にて、所々に磯馴松の大樹あり。
— 岡本綺堂 『平家蟹』 青空文庫
ことに珍しいのはすべて此処の松には所謂磯馴松の曲りくねつた姿態がなく、杉や欅に見る真直な幹を伸ばして矗々と聳えて居ることである。
— 若山牧水 『沼津千本松原』 青空文庫
下谷から本郷、本郷から小石川へ出て、水戸様の屋敷前、そこに松の木のある番所があって、俗に磯馴れの番所といいます。
— 岡本綺堂 『三浦老人昔話』 青空文庫