握り太
にぎりぶと
名詞
標準
文例 · 用例
夏の夜になると、父親は浴衣がけで、印度産の籐の握り太のステッキを携え、莢豆の棚の間や青薄の蔭に潜む若い男女を、川狩の魚のようにつゝき出した。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
なんでも袖の短い綿服にもめん袴をはいて、朴歯の下駄、握り太のステッキといったようないで立ちで、言わば明治初年のいわゆる「書生」のような格好をしておられた。
— 寺田寅彦 『田丸先生の追憶』 青空文庫
と、それよりもその時に限って、何かめそめそして不機嫌になった咲子を見ると、初めは慈愛の目で注意していたが、到頭|苛々して思わず握り太な籐のステッキで、後ろから頭をこつんと打ってしまったのであった。
— 徳田秋声 『仮装人物』 青空文庫
庸三はいつもの塵除けを着て、握り太の籐のステッキをもっていたが、二つ三つの荷物のごろごろしている狭い部屋に迎えられて、葉子と侍女の女美術生北山とのあいだにどっかと坐った。
— 徳田秋声 『仮装人物』 青空文庫
――しかも、そのちょうど握り太のところには、ぺっとりと生血の手形がついているのです。
— 袈裟切り太夫 『右門捕物帖』 青空文庫
普魯西のフレデリツク大王は忍び歩きの時でも、いつも握り太の杖を揮り廻して途々懶け者を見ると、「こら働きをらんか。
— 大正六(一九一七)年 『茶話』 青空文庫
手には握り太の杖を持つてゐた。
— 昭和五(一九三〇)年 『茶話』 青空文庫
けけ、蹴散らすぞっ……」 鏡のような、静かな顔に、蒼白い笑みをうかべた伊賀のあばれン坊、裃の肩を片ほうはずして、握り太の鞭を、群衆の頭上にふるう。
— こけ猿の巻 『丹下左膳』 青空文庫