彳
彳
名詞
標準
文例 · 用例
危き橋をようように這いわたりて終に下り着くに滝のしぶき一面に雨の如く足もとより逆に吹きあぐるさますさまじく恐ろしく暫くも彳みかねつ。
— 伊藤左千夫 『滝見の旅』 青空文庫
梅津の君も今は物もいはで彳めるを、玉枝の君と妾とは目見合せてをり、さすがに恐しからぬにもあらず。
— 萩原朔太郎 『花あやめ』 青空文庫
乘客いと多くて掛腰にさへ餘りて、彳める人もあるを、あはれさち多きわがみどちかな。
— 萩原朔太郎 『花あやめ』 青空文庫
が、しばらく茫然として彳んだ。
— 泉鏡花 『二、三羽――十二、三羽』 青空文庫
夫婦の色香を分けたのである、とも云うが…… 酒井はどこか小酌の帰途と覚しく、玉樹一人縁日の四辺を払って彳んだ。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
芸妓家二軒の廂合で、透かすと、奥に薄墨で描いたような、竹垣が見えて、涼しい若葉の梅が一木、月はなけれど、風情を知らせ顔にすっきりと彳むと、向い合った板塀越に、青柳の忍び姿が、おくれ毛を銜えた態で、すらすらと靡いている。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
」 夫人が彳んでいて掛けないのを見て、早瀬は懐中から切立の手拭を出して、はたはたと毛布を払って、「さあ、どうぞ、」 笑って云うと、夫人は婆さんを背後にして、悠々と腰を下ろして、「江戸児は心得たものね。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
石段の下あたりで、緑に包まれた夫人の姿は、色も一際|鮮麗で、青葉越に緋鯉の躍る池の水に、影も映りそうに彳んだが、手巾を振って、促がして、茶店から引張り寄せた早瀬に、「可い加減になさいよ、極りが悪いじゃありませんか。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫