蝦蟇口
がまぐち
名詞
標準
文例 · 用例
」 とさも羨しそうに小芳が云うと、お妙はフト打仰向いて、目を大きくして何か考えるようだったが、もう一つの袂から緋天鵝絨の小さな蝦蟇口を可愛らしく引出して、「小母さん、これを上げましょう。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
第一、順と見えて、六十を越えたろう、白髪のお媼さんが下足を預るのに、二人分に、洋杖と蝙蝠傘を添えて、これが無料で、蝦蟇口を捻った一樹の心づけに、手も触れない。
— 泉鏡花 『木の子説法』 青空文庫
さあ、慌てたのは、手拭、蝦蟇口、皆無い。
— 泉鏡花 『星女郎』 青空文庫
は可懐しいが、どうです――その机の上に、いつの間に据えたか、私のその、蝦蟇口と手拭が、ちゃんと揃えて載せてあるのではありませんか、お先達。
— 泉鏡花 『星女郎』 青空文庫
年倍なる兀頭は、紐のついた大な蝦蟇口を突込んだ、布袋腹に、褌のあからさまな前はだけで、土地で売る雪を切った氷を、手拭にくるんで南瓜かぶりに、頤を締めて、やっぱり洋傘、この大爺が殿で。
— 泉鏡花 『瓜の涙』 青空文庫
……御勘定……(首にかけた汚き大蝦蟇口より、だらしなく紐を引いてぶら下りたる財布を絞り突銭する)弘法様も月もだがよ。
— 泉鏡花 『山吹』 青空文庫
だもんですから、」ずっと、長火鉢の前を悠々と斜に過ぎ、帯の間へ手を突込むと小さな蝦蟇口を出して、ちゃらちゃらと箪笥の上に置いた。
— 泉鏡花 『葛飾砂子』 青空文庫
錺屋、錺職をもって安んじているのだから、丼に蝦蟇口を突込んで、印半纏で可さそうな処を、この男にして妙な事には、古背広にゲエトルをしめ、草鞋穿で、鏨、鉄鎚の幾挺か、安革鞄で斜にかけ、どうかするとヘルメット帽などを頂き、繻子の大洋傘をついて山野を渡る。
— 泉鏡花 『河伯令嬢』 青空文庫