靨
えくぼ
名詞
標準
文例 · 用例
が、いかな事にも、心を鬼に、爪を鷲に、狼の牙を噛鳴らしても、森で丑の時|参詣なればまだしも、あらたかな拝殿で、巫女の美女を虐殺しにするようで、笑靨に指も触れないで、冷汗を流しました。
— 泉鏡花 『菎蒻本』 青空文庫
」 あの怪しげな烏瓜を、坂の上の藪から提灯、逆上せるほどな日向に突出す、痩せた頬の片靨は気味が悪い。
— 泉鏡花 『白金之絵図』 青空文庫
緋縮緬を手に搦む、襦袢は席の乱れとて、強いて堪えた頬の靨に、前髪の艶しとしとと。
— 泉鏡花 『南地心中』 青空文庫
」郵便屋は、桃の花の頬に、靨を浮べて笑った。
— 太宰治 『新樹の言葉』 青空文庫
魚釣幾度か釣り損ねてようやく得たる一尾に笑靨傾くる少年帰ってオッカサンに何をはなすか。
— 寺田寅彦 『半日ある記』 青空文庫
」 と細りした頬に靨を見せる、笑顔のそれさえ、おっとりして品が可い。
— 泉鏡花 『日本橋』 青空文庫
が、撥を挙げて靨を隠すと、向うむきに格子を離れ、細りした襟の白さ、撫肩の媚かしさ。
— 泉鏡花 『浮舟』 青空文庫
だが、娘は、母親の若よかな靨のある頬が鳥渡の間、内気な少女のように初々しく輝くのを見た。
— 渡辺温 『或る母の話』 青空文庫