薬取
くすりとり
名詞
標準
文例 · 用例
あくる日下女が薬取りから帰ると急に暇をくれと言い出した。
— 寺田寅彦 『どんぐり』 青空文庫
私がちょこちょこ近処だから駈出しては、薬取に行くのでしたが、また薬局というのが、その先生の甥とかいう、ぺろりと長い顔の、額から紅が流れたかと思う鼻の尖の赤い男、薬箪笥の小抽斗を抜いては、机の上に紙を並べて、調合をするですが、先ずその匙加減が如何にも怪しい。
— 泉鏡花 『薬草取』 青空文庫
相応に流行って、薬取も多いから、手間取るのが焦ったさに、始終|行くので見覚えて、私がその抽斗を抜いて五つも六つも薬局の机に並べて遣る、終には、先方の手を待たないで、自分で調合をして持って帰りました。
— 泉鏡花 『薬草取』 青空文庫
今日もお薬取りですか。
— 宮沢賢治 『よく利く薬とえらい薬』 青空文庫
打傾いたり、首垂れたり、溜息をしたり、咳いたり、堅炭を埋けた大火鉢に崩折れて凭れたり、そうかと思うと欠伸をする、老若の患者、薬取がひしと詰懸けている玄関を、へい、御免ねえ、で愛吉はつかつかと。
— 泉鏡花 『三枚続』 青空文庫
金五両三人扶持の小禄を食み、常に弊衣を着てゐるのに、君命を受けてお玉が池へ薬取に往く時は、津軽家の上下紋服を借りて着て、若党草履取をしたがへ、鋏箱を持たせて行つた。
— 森鴎外 『伊沢蘭軒』 青空文庫
板橋は無邪気な漢で、薬取の任を帯る毎に、途次親戚朋友の家を歴訪して馬牛の襟裾を誇つたさうである。
— 森鴎外 『伊沢蘭軒』 青空文庫
暗い夜を薬取りの使にも行ってくれた。
— 岡本綺堂 『二階から』 青空文庫