枉屈
おうくつ
名詞
標準
文例 · 用例
学校を出てから、東京へ出て、時代の新しい空気に触れることを希望していながら、固定的な義姉(彼女の養母で叔母)の愛に囚われて、今のような家庭の主婦となったことについては、彼女自身ははっきり意識していないにしても、私の感じえたところから言えば、多少|枉屈的な運命の悲哀がないことはなかった。
— 徳田秋声 『蒼白い月』 青空文庫
踏みにじられてその枉屈を述べることもできないで泣いていた廷章は激怒した。
— 田中貢太郎 『竇氏』 青空文庫
此故に当世の文学者は口に俗物を斥罵する事|頗る甚だしけれど、人気の前に枉屈して其|奴隷となるは少しも珍らしからず。
— 三文字屋金平 『為文学者経』 青空文庫
其用意を持つて、此潮流に乗つて、年頃の枉屈を伸べるのが、当を得たものではあるまいか。
— 折口信夫 『神道の史的価値』 青空文庫
――臣はもと布衣、みずから南陽に耕し、いやしくも性命を乱世に全うし、聞達を諸侯に求めざりしに、先帝臣の卑鄙なるを以てせず、猥におんみずから枉屈して、三たび臣を草廬にかえりみたまい、臣に諮るに当世の事を以てしたもう。
— 出師の巻 『三国志』 青空文庫