粗彫り
あらぼり
名詞
標準
文例 · 用例
ここへ来てからというもの、体身中が荒彫りのような、粗豪な塊で埋められてしまい、いつも変らず少し愚鈍ではございますけど、そのかわり兄と一緒に、日々野山を駆け廻っておりますの。
— 小栗虫太郎 『白蟻』 青空文庫
金春を下絵、金剛を荒彫りとすれば、観世は彫り上げて磨きをかけて角々を丸くしたようなもので、見方によっては金春の古雅を転化して円満味とし、金剛の尖鋭さを消化して華麗味としたものかとも考えられる。
— 夢野久作 『能とは何か』 青空文庫
仕事は私一人でなく、弟子を使い、荒彫りは自分がして、仕上げは弟子にも手伝わせ、まず滞りなく仕事を終って首尾|能く掛かりの方へ納めたことでありました。
— 皇居御造営の事、鏡縁、欄間を彫ったはなし 『幕末維新懐古談』 青空文庫
まず、雄鶏の方から初めました(木彫りの順序は鑿打ちで形を拵え、鑿と小刀で荒彫り、それから小作り、仕上げとなる)。
— 矮鶏の製作に取り掛かったこと 『幕末維新懐古談』 青空文庫
無駄をしていたわけではないが、前述のような次第で思わず時日を費やしたので、随分精出してやりましたけれども、その年の十二月の末になってやっと小作りが出来た位でした(仕事の順序からいうと、この小作りというのは荒彫りと仕上げの間となる)。
— 矮鶏の製作に取り掛かったこと 『幕末維新懐古談』 青空文庫
万一間に合い兼ねた時、これがなくなっていては申し訳が立たないから)、荒彫りのまま、チャボを風呂敷に包み、てくてく南鍋町の若井氏の宅を訪ねました。
— 矮鶏の製作に取り掛かったこと 『幕末維新懐古談』 青空文庫
若井氏は私の申し納れを大分不機嫌な顔をして聞いておりましたが、その話はそれとして、何よりまずその荒彫りを見せて頂こうといいますから、私は風呂敷を解きました。
— 矮鶏の製作に取り掛かったこと 『幕末維新懐古談』 青空文庫
これは思うに、若井氏が荒彫りを見て、これならと思ったよりも、同氏の気性が私の気持をよく理解しておもしろいと思ったことが手伝ったのでありましょう。
— 矮鶏の製作に取り掛かったこと 『幕末維新懐古談』 青空文庫