鼠地
ねずじ
名詞
標準
文例 · 用例
さも旅疲の状見えて、鼠地の縮緬に、麻の葉|鹿の子の下着の端、媚かしきまで膝を斜に、三枚襲で着痩せのした、撫肩の右を落して、前なる桐火桶の縁に、引つけた火箸に手をかけ、片手を細りと懐にした姿。
— 泉鏡花 『伊勢之巻』 青空文庫
」 どこで脱いだか、はッとたちまち、うす鼠地に蔦を染めた、女作家の、庭の朧の立姿は、羽織を捨てて、鶏頭の竹に添っていた。
— 泉鏡花 『白花の朝顔』 青空文庫
十一 ある日の午後、葉子は庸三の同意の下に、秋本の宿を訪問すべく、少し濃いめの銀鼠地にお納戸色の矢筈の繋がっている、そのころ新調のお召を着て出て行った。
— 徳田秋声 『仮装人物』 青空文庫
佐渡は博勞だけでも十分であるが只博勞だけでは鼠地の切れのやうな感じを免れぬ。
— 長塚節 『佐渡が島』 青空文庫
美人は鼠地へ金糸銀糸で刺繍つた牡丹の花である。
— 長塚節 『佐渡が島』 青空文庫
鼠地のネルを重ねた銘仙の褞袍を後から着せるつもりで、両手で襟の所を持ち上げたお延は、拍子抜けのした苦笑と共に、またそれを袖畳みにして床の裾の方に置いた。
— 夏目漱石 『明暗』 青空文庫
小紋は鼠地を本色とするといふ。
— 島崎藤村 『桃の雫』 青空文庫
老母の口吻によると、業平はよほどの洒落者であつたと見えて、鼠地の衣裳の上に白い雪の降りかゝつたのをおもしろく思ひ、それを模樣に染めさせたのが、そも/\の小紋のはじめであると、その道の人の間にいひ傳へられて來たとか。
— 島崎藤村 『桃の雫』 青空文庫