親熊
おやぐま
名詞
標準
文例 · 用例
親熊は突然あと足を折って尻もちをつくような格好をして一度ぐるりと回るかと思うと、急いで駆け出すが、すぐに後ろを振りむいて何かしら自分の腰に食いついている目に見えぬ敵を追い払おうとする様子をする。
— 寺田寅彦 『空想日録』 青空文庫
やがて魂の抜けた親熊の死骸が甲板につりおろされると、子熊はいきなり飛びついて母の首筋に食らいついて引きずり出そうとするような態度を見せる。
— 寺田寅彦 『空想日録』 青空文庫
親熊は毎日外へ出ると、かならず果物を拾って帰って、仔熊にもあたえ、彼にも分けてくれた。
— 捜神後記(六朝) 『中国怪奇小説集』 青空文庫
それで彼は幸いに餓死をまぬかれていたが、日数を経るうちに仔熊もおいおい生長したので、親熊は一々にそれを背負って穴の外へ運び出した。
— 捜神後記(六朝) 『中国怪奇小説集』 青空文庫
自分ひとりが取り残されたら、いよいよ餓死することと観念していると、仔熊を残らず運び終った後に、親熊はまた引っ返して来て、人の前に坐った。
— 捜神後記(六朝) 『中国怪奇小説集』 青空文庫
すべてに於てムクなんぞとは比較にならない、訓練の欠けた代物ではあるけれど、ただ一つ感心なのは、親熊の毛皮を忘れないということだけで、ためしにほかの毛皮を投げ込んでやっても、それは見向きもせずに、親の毛皮をのみ後生大事に守り、それにじゃれついて喜んでいる。
— 弁信の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
しつっこい話だな――と、米友が少しく眉をひそめて見ていると、熊の子が、例の親熊の皮だというのに必死になってしがみついているのを、数多の人が、もぎ取ろうとしていること、昨夜と変りがありません。
— 畜生谷の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
人間共に寄ってたかって手込めにされるから、子熊はなお力限りに争って、悲鳴を揚げながら、しきりに身振りをするのを、例の親熊の皮を欲しがって身悶えをするのだということが、昨晩の実例と、説明とを聞いているだけに、米友の頭にはハッキリと受取れました。
— 畜生谷の巻 『大菩薩峠』 青空文庫