黒染め
くろぞめ
名詞
標準
文例 · 用例
ちゅうちょなく伝六に導かれていったその姿を見迎えながら、落としまゆにお歯黒染めた、まだみずみずしいうばざくらの若後家が声をひそめると、もっけもないことをささやきました。
— 明月一夜騒動 『右門捕物帖』 青空文庫
依然として喜びも確かに見られたが、黒染めの憂鬱な荒廃の為に、最強の元気ですらなえてしまう。
— THE FOUR DAYS' NIGHT 『四日闇夜』 青空文庫
釣り竿といっても、三十センチぐらいの短いやわらかな鯨穂の竿に黒染め一厘半の道糸。
— 三遊亭金馬 『江戸前の釣り』 青空文庫
美女の背後に当る……其の山懐に、唯一本、古歌の風情の桜花、浅黄にも黒染にも白妙にも咲かないで、一重に颯と薄紅。
— 泉鏡太郎 『神鑿』 青空文庫
『少いものを唆かして要らぬ骨を折らせるな、娑婆ツ気な老爺めが、』と二人の背後にぬいと立つた…… 苔かと見ゆる薄毛の天窓に、笠も被らず、大木の朽ちたのが月夜に影の射すやうな、ぼけやた色の黒染扮装で、顔の蒼い大入道!
— 泉鏡太郎 『神鑿』 青空文庫
その本のなかには恋のあはれを黒染の衣につゝんだ滝口入道のことなどが書いてあった。
— 素木しづ 『嫂』 青空文庫
ここで、「榛原」は萩でなしに、榛の木原で、その実を煎じて黒染(黄染)にする、その事を「衣にほはせ」というのだとする説が起って、目下その説が有力のようであるが、榛の実の黒染のことだとすると、「入りみだり衣にほはせ」という句にふさわしくない。
— 斎藤茂吉 『万葉秀歌』 青空文庫
そして榛の実の黒染説は、続日本紀の十月十一月という記事があるために可能なので、この記事さへ顧慮しないならば、萩の花として素直に鑑賞の出来る歌なのである。
— 斎藤茂吉 『万葉秀歌』 青空文庫