虫螻
むしけら
名詞
標準
文例 · 用例
何にも無い、畳の摺剥けたのがじめじめと、蒸れ湿ったその斑が、陰と明るみに、黄色に鼠に、雑多の虫螻の湧いて出た形に見える。
— 泉鏡花 『菎蒻本』 青空文庫
虫螻と等しき下賤の者の生命を以て、高貴の御命を延ばし参ゐらせむ事、決して不忠の道に非ず。
— 夢野久作 『白くれない』 青空文庫
縦横に行き違っている太い、細い、樹々の根の網の間には、無数の虫螻が、或は暖く蟄し、或はそろそろと彼等の殻を脱ぎかけ、落積った枯葉の厚い層の奥には、青白いまぼろしのような彼等の子孫が、音もない揺籃の夢にまどろんでいるだろう。
— 宮本百合子 『地は饒なり』 青空文庫
B――そんな考え方は虫螻の考え方なのだ。
— 豊島与志雄 『病室の幻影』 青空文庫
ことに武士から虫螻蛄の如くに扱われていた町人・百姓等は、さらにそれをエタに向かって転嫁する。
— 喜田貞吉 『エタに対する圧迫の沿革』 青空文庫
ここにおいてか階級意識の盛んな時代に、武士から虫螻の如く扱われた百姓、町人らは、それをよいことにして彼らの上に威張り散らします。
— 喜田貞吉 『融和問題に関する歴史的考察』 青空文庫
虫螻蛄と侮られつゝ生を享く六月十六日 大崎会。
— 高浜虚子 『五百五十句』 青空文庫
五 彼が怒ったので、金子重輔は、『では、虫螻と云った理を聞かしてやろう』 と、肱を張って云った。
— 吉川英治 『山浦清麿』 青空文庫