富士額
ふじびたい
名詞
標準
widow's peak
文例 · 用例
とりわけ近頃|憂ひが添つて却つてあでやかな妹娘の富士額ひが宗右衛門には心憎いほど悲しく眺められたのであつた。
— 岡本かの子 『老主の一時期』 青空文庫
列車がプラツトフオムを離れるとき、見送りに來てゐた弟が、列車の窓から青い富士額を覗かせて、がんばれ、とひとこと言つた。
— 太宰治 『思ひ出』 青空文庫
容貌は非常に高尚で、キッパリした富士額、細面で中高の顔、地蔵眉、澄み切った眼――といって決して冷淡ではなく、あまりに邪心がないために、一点の濁りさえ見られないのである。
— 国枝史郎 『剣侠受難』 青空文庫
手をつかまえて、玄関のわきの自分の小部屋へ入って、膝をつきつけて、どうしたのよ、手紙もよこさないで、と云うと、おけいちゃんは富士額の生えぎわを傾けて、やはりおとなしく御免なさいね、とあやまるのであった。
— 宮本百合子 『なつかしい仲間』 青空文庫
富士額で、刻んだような美しい鼻を持ち、背丈が高く、鹿を連想させた。
— 倉田百三 『光り合ういのち』 青空文庫
春信、春章、歌麿、国貞と、豊満な肉体、丸顔から、すらりとした姿、脚と腕の肉附きから腰の丸味――富士額――触覚からいえば柔らかい慈味のしたたる味から、幕末へ来ては歯あたりのある苦みを含んだものになっている。
— 長谷川時雨 『明治美人伝』 青空文庫
自分の白い富士額の中央に押当ててシッカリと眼を閉じた……と思う中に、 ……轟然一発……。
— 夢野久作 『二重心臓』 青空文庫
かわらないのは眉から額、富士額の生際へかけて、あの人の持つ麗々しい気品のある、そして横顔の可愛らしさ、わたしは訪ねて来て、近々と見ることの甲斐のあったのをよろこんだ。
— 長谷川時雨 『一世お鯉』 青空文庫