硝子戸
がらすど
名詞
標準
文例 · 用例
西暦一九二五年夏東京の郊外にて著者愛憐詩篇夜汽車有明のうすらあかりは硝子戸に指のあとつめたくほの白みゆく山の端はみづがねのごとくにしめやかなれどもまだ旅びとのねむりさめやらねばつかれたる電燈のためいきばかりこちたしや。
— 萩原朔太郎 『純情小曲集』 青空文庫
銃器店の前で 明るい硝子戸の店の中で、一つの磨かれた銃器さへも、火藥を裝填してないのである。
— 萩原朔太郎 『宿命』 青空文庫
灯をつける前には屹度硝子戸を引いて羽蟲の來るのを防ぐにも係らず、二匹の蛾が二本の白い線のやうになつて、くり/\と電燈のまはりを飛び※つてゐた。
— 有島武郎 『小さき影』 青空文庫
而して硝子戸の外には光を慕つて、雨のやうに硝子にぶつかつて來る蟲の音と、遙か下の方で噴水の落ちる水音とがさやかに聞えるばかりだつた。
— 有島武郎 『小さき影』 青空文庫
而して硝子戸を漏れる電燈の片明りが不思議な姿にそれを照してゐた。
— 有島武郎 『小さき影』 青空文庫
ある時は硝子戸に近よつて、その面に鈴なりになつて、細かく羽根を動かしながら、光を目がけて近寄らうとする羽蟲の類を飽く事なく眺めやつたりした。
— 有島武郎 『小さき影』 青空文庫
それを聞くと私はふるひつくやうな執着を感じて、出來るだけやさしく「はいよ」といらへながら、硝子戸を急ぎながらそーつと開けて二階に上つて見た。
— 有島武郎 『小さき影』 青空文庫
『では』と云つて、私が背ろの硝子戸を締めると、医者の奥さんは、ニッコリとした。
— 中原中也 『亡弟』 青空文庫