断崕
だん崕
名詞
標準
文例 · 用例
その目を開ける時、もし、あの丈の伸びた菜種の花が断崕の巌越に、ばらばら見えんでは、到底この世の事とは思われなかったろうと考えます。
— 泉鏡花 『薬草取』 青空文庫
その年は八月中旬、近江、越前の国境に凄じい山嘯の洪水があって、いつも敦賀――其処から汽車が通じていた――へ行く順路の、春日野峠を越えて、大良、大日枝、山岨を断崕の海に沿う新道は、崖くずれのために、全く道の塞った事は、もう金沢を立つ時から分っていた。
— 泉鏡花 『栃の実』 青空文庫
一方早く自身の生活に立ち還らなければならないという焦燥に駆られながらも、危ない断崕に追い詰められているような現実からどう転身していいかに迷っていた。
— 徳田秋声 『仮装人物』 青空文庫
見る見る風と波とに押しやられて船は吸い付けられるように、吹雪の間からまっ黒に天までそそり立つ断崕に近寄って行くのを、漁夫たちはそうはさせまいと、帆をたて直し、艪を押して、横波を食わせながら船を北へと向けて行った。
— 有島武郎 『生まれいずる悩み』 青空文庫
その猛烈な力を感じてか、断崕の出鼻に降り積もって、徐々に斜面をすべり下って来ていた積雪が、地面との縁から離れて、すさまじい地響きとともに、何百丈の高さから一気になだれ落ちる。
— 有島武郎 『生まれいずる悩み』 青空文庫
『さういふ波の活動を連続して受けなければならないのは断崕になつてゐる処だ。
— STORY-BOOK OF SCIENCE 『科学の不思議』 青空文庫
即ち截り立てたやうに真直なあの断崕は、海の為めに海岸の堤の役目をつとめてゐるのだ。
— STORY-BOOK OF SCIENCE 『科学の不思議』 青空文庫
さういふ断崕は、フランスとイギリスの間のイギリス水道に沿ふた処で見る事が出来る。
— STORY-BOOK OF SCIENCE 『科学の不思議』 青空文庫