絶巓
ぜってん
名詞
標準
文例 · 用例
羚羊・長之助草(北岳の絶巓に登る記) それから尾根伝いに、間の岳の絶頂まで這い上り、三等三角測量標の下に立った、北西に駒ヶ岳(甲斐)の白い頭が、眼前の鋭い三稜形をしている北岳に、挟みつけられて見える、霧が来て散った。
— 小島烏水 『白峰山脈縦断記』 青空文庫
「極暑九十七度九分、山々に未だ雪あるに呆れ候、一昨夕、稀なる夕映、望遠鏡にて西山一帯を眺めいたるところ、駒ヶ岳の絶巓、地蔵の頭、間の岳、農鳥の絶頂なる、各三角測量標を、歴々と発見いたし候」(七月十八日)、この時の感じは、何だか自分が観て、N君に知らせているような気がした。
— 小島烏水 『雪の白峰』 青空文庫
彼は今や黙示の深きに接し、信仰の絶巓に登りて、遥か下に友の陋態を眺むるの余裕を抱いている。
— 内村鑑三 『ヨブ記講演』 青空文庫
蝦夷石南と「ミユルツス」との路を塞げるを、押し分けつゝ攀ぢ登りて見れば、大瀑は山の絶巓より起り、削れる如き巖壁に沿ひて倒下す。
— IMPROVISATOREN 『即興詩人』 青空文庫
あやまって海に落ち込んだ悪魔が、肉付きのいい右の肩だけを波の上に現わしている、その肩のような雷電峠の絶巓をなでたりたたいたりして叢立ち急ぐ嵐雲は、炉に投げ入れられた紫のような光に燃えて、山ふところの雪までも透明な藤色に染めてしまう。
— 有島武郎 『生まれいずる悩み』 青空文庫
自分の目には絶巓のない絶巓ばかりが見えていたい。
— 有島武郎 『或る女』 青空文庫
マッカリヌプリの絶巓の雪だけが燐光を放ってかすかに光っていた。
— 有島武郎 『カインの末裔』 青空文庫
まもなく、よもやそこにと思われる中空の雲のあいだから、ぬうっと突きでた深紅の絶巓――。
— 天母峰 『人外魔境』 青空文庫