滲み出る
にじみでる
動詞
標準
文例 · 用例
たゞ水源は水晶を産し、水は白水晶や紫水晶から滲み出るものと思つて居た。
— 岡本かの子 『川』 青空文庫
おまえの親系にはあゝした故障があり、それ故に、蝕まれた心の口には秘かに同類の痛みのものに向って慈愍となつかしさが絶えず滲み出る性質でないことはなかったのだ。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
昼の蝋燭が鼻の真向にしんみりと光り輝く、眼と眼とが凝とその底から吸ひ付くやうに差覗く……つくづくと陰影と霊魂と睨み会つたまま底の底から自愛と憐憫の心とが切々と滲み出る。
— 北原白秋 『桐の花』 青空文庫
しかし舞台の上に子供などが出て来て、甲の高い声で、憐れっぽい事などを云う時には、いかな私でも知らず知らず眼に涙が滲み出る。
— 夏目漱石 『硝子戸の中』 青空文庫
土牛はその線を嫌々引けば引くほど、その線が光彩あるものとして、また深い人間的味がその線に滲み出るのである。
— 美術論・画論 『小熊秀雄全集−19−』 青空文庫
つまり、そこに髪梳きの、技巧があるというわけだが…その時は仮髪師為十郎の趣向からして、幕切の見得の際には照明を暗くさせ、眼だけを白く抜いて、真赤に滲み出る毒血の凄みを、内部に塗った、燐で浮き出させる仕掛けにしたのである。
— 小栗虫太郎 『人魚謎お岩殺し』 青空文庫
俄か天気の三月末の暖気は急にのぼって、若い踊り子たちの顔を美しく塗った白粉は、滲み出る汗のしずくで斑らになった。
— 少年少女の死 『半七捕物帳』 青空文庫
加之も二度目の傷は刃物で突かれたと見えて、洋袴に滲み出る鮮血の温味を覚えた。
— 岡本綺堂 『飛騨の怪談』 青空文庫