雄蝶
おちょう
名詞
標準
文例 · 用例
金屏風を引繞らした、四海波静に青畳の八畳で、お珊自分に、雌蝶雄蝶の長柄を取って、橘活けた床の間の正面に、美少年の多一と、さて、名はお美津と云う、逢阪の辻、餅屋の娘を、二人並べて据えたのである。
— 泉鏡花 『南地心中』 青空文庫
「雌蝶も雄蝶もあったもんじゃないのよ貴方。
— 夏目漱石 『道草』 青空文庫
「雄蝶、雌蝶だなんて、娘達に教えるばかりでも大変ですよ」「いや、そうして頂けば難有い」と稲垣も言った。
— 島崎藤村 『家(上巻)』 青空文庫
「それというのも大切な雄蝶を、お盗まれになってからでございましょうね」片足の男の名は吉次であり、そうして美女の名は桔梗様であり、その関係は主従らしい。
— 国枝史郎 『神秘昆虫館』 青空文庫
「吉次や、そうだよ、お父様はね、あの雄蝶をなくして以来、ずっと不機嫌におなりなすったのだよ」桔梗様の声は憂わしそうである。
— 国枝史郎 『神秘昆虫館』 青空文庫
それにさ」と云うとやや皮肉に、「雄蝶一匹を手に入れたところで、全く役に立たないばかりか、それを手に入れた人間は、かえって禍いを蒙るのだからなあ。
— 国枝史郎 『神秘昆虫館』 青空文庫
なくなった雄蝶ばかりに心を取られ、雌蝶の方を疎かにしては、かえってよくないとこういうのさ。
— 国枝史郎 『神秘昆虫館』 青空文庫
しかも不覚にもこの私は、雄蝶の方を逃がしてしまいました」「ああその雄蝶をお探しになるため、小梅田圃などへ参られましたので。
— 国枝史郎 『神秘昆虫館』 青空文庫