遺存
いぞん
名詞
標準
文例 · 用例
母親は、あまりながい手術の間を身悶えして病室にまち、廊下を歩いては、『万一手術中に死亡の事有之候とも遺存これなく候』と手術契約書を出したことを考へて、もうあれが最後であったかもしれない。
— 素木しづ 『青白き夢』 青空文庫
礼失して野に求むてふ本文のごとく、かかる古俗が日本に亡びて、琉球に遺存したのだ。
— 蛇に関する民俗と伝説 『十二支考』 青空文庫
当時の時代、豈作者の筆頭を借りて、其|陋醜を遺存せしものにあらずとせんや。
— 北村透谷 『徳川氏時代の平民的理想』 青空文庫
ちょうどこの百七十七回の中途で文字がシドロモドロとなって何としても自ら書く事が出来なくなったという原稿は、現に早稲田大学の図書館に遺存してこの文豪の悲痛な消息を物語っておる。
— 内田魯庵 『八犬伝談余』 青空文庫
日本に傳世品としていゝものが澤山遺存してゐる。
— 小野賢一郎 『やきもの讀本』 青空文庫
盆踊りは、何故音頭取りを中心として、其周囲に大きな輪を描いて廻るのであらうといふ事を考へて来ると、其処に天の御柱廻りの形式の遺存してゐる事を感じる。
— 折口信夫 『盆踊りと祭屋台と』 青空文庫
だが、其外の民間伝承、殊に、信仰生活については、我々の古代生活様式の、遺存して居る事を疑ふだけの別化性能の活動は、まだ起らない。
— 折口信夫 『古代研究 追ひ書き』 青空文庫
此等の遺存を綜合しながらの叙述である為、勢、時代・年月の印象が薄くなる事もある。
— 折口信夫 『古代研究 追ひ書き』 青空文庫