糸切歯
いときりば
名詞
標準
文例 · 用例
稚気を帯びた糸切歯の根元に細い金冠が嵌っている。
— 岡本かの子 『母子叙情』 青空文庫
ふと、あのK――女史が書いて呉れた詞句のやうに、花の茎でもぎつちり糸切歯と糸切歯の間に噛み締めて歩いて行くなら、この惧れに堪へられさうに思へた。
— 岡本かの子 『花は勁し』 青空文庫
出刃を落した時、赫と顔の色に赤味を帯びて、真鍮の鉈豆煙草の、真中をむずと握って、糸切歯で噛むがごとく、引啣えて、「うむ、」 と、なぜか呻る。
— 泉鏡花 『露肆』 青空文庫
途端に糸切歯をきりりと鳴して、脱兎のごとく、火鉢の鉄瓶を突覆すと、凄じい音がして※と立った灰神楽、灯も暗く、あッという間に、蝶吉の姿はひらひらとして見えなくなる。
— 泉鏡花 『湯島詣』 青空文庫
おくみは茶の間の灯の下でぼたんを附けて、白い糸のはしを糸切歯で切つた。
— 鈴木三重吉 『桑の実』 青空文庫
そうして、やはり何の気もなく、その禿のマン中の黒い毛を糸切歯の間にシッカリと挟んでグイと引抜いたもんだ。
— 夢野久作 『超人鬚野博士』 青空文庫
そしてその後数年間、国民は毎年その日に糸切歯を抜いて、タメハメハを祭った。
— 大杉栄 『奴隷根性論』 青空文庫
恐らく上顎の糸切歯がここに喰いこんで、四郎少年の皮膚と肉とを破り、頸動脈をさえ喰い切ったのであろう。
— 海野十三 『恐怖の口笛』 青空文庫