子守歌
こもりうた
名詞
標準
文例 · 用例
そしていま、彼女の唄ふしづかな、しづかな子守歌をききながら、私の心は幸福にも「遠い墓場の草かげにまで」すやすやと眠りついて行くのです。
— 萩原朔太郎 『散文詩・詩的散文』 青空文庫
即ち蕪村は、その藪入りの娘に代って、彼の魂の哀切なノスタルジア、亡き母の懐袍に夢を結んだ、子守歌の古く悲しい、遠い追懐のオルゴールを聴いているのだ。
— 萩原朔太郎 『郷愁の詩人 与謝蕪村』 青空文庫
まことに蕪村の俳句においては、すべてが魂の家郷を恋い、火の燃える炉辺を恋い、古き昔の子守歌と、母の懐袍を忍び泣くところの哀歌であった。
— 萩原朔太郎 『郷愁の詩人 与謝蕪村』 青空文庫
川の水が子守歌のように、高くなり、低くなって、私たちの足音を消して、後から追い冠せて来るときには、一行はまた、森の中の人となっていた。
— 小島烏水 『白峰山脈縦断記』 青空文庫
探偵が来て「可能的悪漢」と話していると、隣室から土人娘の子守歌が聞こえる。
— 寺田寅彦 『映画時代』 青空文庫
いまもなお私の耳朶をくすぐる祖母の子守歌。
— 太宰治 『玩具』 青空文庫
君枝は抱き上げて、「船に積んだアらどこまで行きゃアる木津や難波の橋の下ア」 子供の頃、他吉が俥に乗せて、きかせてくれた子守歌を小声でうたっていると、ぽたぽた涙が落ちて来た。
— 織田作之助 『わが町』 青空文庫
私の悔恨は殺された娘の上へ乗り移り、洋菓子やチョコレエトを買わず、駄菓子の飴を買うて、それでわびしい安宿の仮寝の床の寂しさをまぎらしていたところに、その娘の悲しい郷愁が感じられるような気がし、ふと私は子守歌を聴く想いだった。
— 織田作之助 『神経』 青空文庫