綾なす
あやなす
動詞
標準
文例 · 用例
帯も長襦袢もこれに消えて、山深き処、年|古る池に、ただその、すらりと雪を束ねたのに、霧ながら木の葉に綾なす、虹を取って、細く滑かに美しく、肩に掛けて背に捌き、腰に流したようである。
— 泉鏡花 『南地心中』 青空文庫
かつて文壇の梁山泊と称えられた硯友社、その星座の各員が陣を構え、塞頭高らかに、我楽多文庫の旗を飜した、編輯所があって、心織筆耕の花を咲かせ、綾なす霞を靉靆かせた。
— 泉鏡花 『薄紅梅』 青空文庫
揚幕の霞を出づる、玉に綾なす姿とともに、天人が見はるかす、松にかかった舞台の羽衣の錦には、脈打つ血が通って、おお空の富士の雪に照栄えた。
— 泉鏡花 『卵塔場の天女』 青空文庫
「絵のようにみせる」とは、繍の上でもこれまで言われてきたところであるが、これは、繍そのものの質を弁えぬも甚だしい、繍は絵とちがって、一本一本の糸が微妙繊細な立体感をもって、これが緻密に綾なすところに妙味がある。
— 矢田津世子 『※女抄録』 青空文庫
竜之助は大兵の男の荒っぽい剣術ぶりを笑止がって見ているうちに、少年は右へ左へ前へ後ろへ、ほどよく綾なす手練と身の軽さ。
— 甲源一刀流の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
君が子はをんな児なれば綾なすちりめんこそよけれと念へるなり、その包みを抱へかへらんとすれどわが家にもあかん坊の居るべかれば君が子のみに送りわが赤ん坊を何とておろそかに為すべき、われは今一枚の羽二重なるあまりに派手ならざるちやんちやんを選みその包み二つを提げ上野広小路の雑閙の中を歩めり。
— 忘春詩集 『忘春詩集』 青空文庫
「この手鞠は、お前が拵えたのか」 手鞠はかがり掛けで、綾になった飾り糸が半分ほど掛けてありますが、普通の娘達が趣味にもたしなみにも作る、五色の糸の美しく綾なすのと違って、かがり方は如何にも巧みですが、色糸は白と青と、そして黒だけ、はなはだ淋しくて変ったものでした。
— 人違い殺人 『銭形平次捕物控』 青空文庫
ふざけた男よ」 と、いちばい、憎さも憎しと柳眉を立てて、綾なす二刀の秘術をきわめ、魔術とも見えるその迅い光の輪のうちに、発止と、相手の槍を見事、巻き取ッて搦め落していた。
— 吉川英治 『新・水滸伝』 青空文庫