霧隠れ
きりがくれ
名詞
標準
文例 · 用例
林之助も家の外まで送って出ると、ゆうぐれの町には秋の霧が薄く迷って、豊吉とほかの二、三人が振り照らしてゆく提灯の灯の影は、その霧隠れにぼんやりとゆれて行った。
— 岡本綺堂 『両国の秋』 青空文庫
「百の数が揃いましたら、その代り霧隠れ雲隠れの秘薬の製法、御伝授下さりましょうなァ」「や、人まで殺した執心に感じて、百までには及ばぬ。
— 江見水蔭 『怪異黒姫おろし』 青空文庫
八十六でもう好い」「でも、百の印籠から取出した薬の数々を練り合せ、それに先生御秘蔵の薬草を混ぜたのが、霧隠れ雲隠れの秘薬とやら」「それには又それで秘事口伝が有る。
— 江見水蔭 『怪異黒姫おろし』 青空文庫
さァそれでおぬしにも、印籠集めを頼んだのじゃ」「では、百種の薬を百の印籠から集めて、それで霧隠れ雲隠れの秘薬を製造とは、偽りで御座りましたか」「偽りは偽りながら、霧隠れ雲隠れの秘薬、その他には眠り薬、痺れ薬、毒薬、解毒薬、長命不死の薬、笑い薬、泣き薬、未だ色々の秘薬の製法は、一通り心得おる。
— 江見水蔭 『怪異黒姫おろし』 青空文庫
「霧隠れ雲隠れ、と申しても、つまりは火遁の術、煙遁の術、薬品にて煙を急造し、目潰しを大袈裟にするまでじゃ。
— 江見水蔭 『怪異黒姫おろし』 青空文庫
霧隠れ雲隠れの秘薬、かつてこれは洞斎から真田幸村にも教えて、風を利用して薬粉を散らし、敵の大軍へ一時に目潰しを食わせるという計画をも立てたのだが、大阪夏之陣の風の吹き方が、巧く注文に適らなかったのであった。
— 江見水蔭 『怪異黒姫おろし』 青空文庫
そんな安楽世界に住みながら、やはり日本が恋しくなったのか」 清兵衛は慇懃にうなずくと、真北のほうを指して、「ちょうど霧隠れになっておりますが、あれは恐山といって、北郡のしるしになる山でございます。
— 久生十蘭 『ボニン島物語』 青空文庫