股火鉢
またひばち
名詞
標準
文例 · 用例
股火鉢で五合とやらかそう。
— 泉鏡花 『夜行巡査』 青空文庫
そこの貧民小学校の教師をして農学校に通う学生の二三人が自炊している事務所を兼ねた一室に来ると、尋常四年を受持っている森村が一人だけ、こわれかかった椅子に腰をかけて、いつでも疲れているような痩せしょびれた小さな顔を上向き加減にして、股火鉢をしていた、干からびた唇を大事そうに結びながら。
— 有島武郎 『星座』 青空文庫
女は瀬戸の火鉢を奥からかゝへて来て、富岡に股火鉢をすゝめてくれた。
— 林芙美子 『浮雲』 青空文庫
余が小使にみちびかれて職員室に入ると、外套を肩からかけて股火鉢をしていた女性がいたが、それが彼女であった。
— 坂口安吾 『中庸』 青空文庫
「赤十字か、車ンところで待っていろ」 そういうと火鉢のそばへ戻って、股火鉢をしながら仲間と雑談をはじめた。
— 久生十蘭 『ノア』 青空文庫
道場の前を通つて、下男部屋を覗くと、大痕痘の熊吉が、庭の掃除をすませ、手焙を股火鉢にして、これだけは贅澤らしい煙草を燻らせてをります。
— 懷ろ鏡 『錢形平次捕物控』 青空文庫
眞夏に股火鉢かなんかやつて、男の急所に大火傷を拵へたと聽いたら、親分だつて、それね、可笑しくなるでせう」「フ、フ、フ、妙なことを嗅ぎ出して來るんだね、お前といふ人間は。
— 猿蟹合戰 『錢形平次捕物控』 青空文庫
高利の金で儲けちや、恐ろしく高い道具を集めて、青黄粉のガボガボでせう」「青黄粉とは違ふよ」「だから綱田屋の主人の部屋には爐が切つてある、――尤もあの五郎次郎といふのは、若い時の道樂が祟つてひどい疝氣ださうで、夏でも時々は股火鉢で温める。
— 猿蟹合戰 『錢形平次捕物控』 青空文庫