通わす
かよわす
動詞
標準
文例 · 用例
電話機が発明されて以来は、一双の銅線に依って思いを百里の境に通わす事も出来る。
— 寺田寅彦 『写真電送の新法』 青空文庫
」 法師も言葉なく見送るうち、沖から来るか、途絶えては、ずしりと崖を打つ音が、松風と行違いに、向うの山に三度ばかり浪の調べを通わすほどに、紅白|段々の洋傘は、小さく鞠のようになって、人の頭が入交ぜに、空へ突きながら行くかと見えて、一条道のそこまでは一軒の苫屋もない、彼方大崩壊の腰を、点々。
— 泉鏡花 『草迷宮』 青空文庫
長く冷たき黒髪は、玉の緒を揺る琴の糸の肩に懸って響くよう、互の口へ出ぬ声は、膚に波立つ血汐となって、聞こえぬ耳に調を通わす、幽に触る手と手の指は、五ツと五ツと打合って、水晶の玉の擦れる音、戦く裳と、震える膝は、漂う雲に乗る心地。
— 泉鏡花 『草迷宮』 青空文庫
今しがたです…… 池川さんの、二階で、」 と顔を見合せた時、両方で思わず頷く様な瞳を通わす、ト圧えた手を膝にして巽はまた笑を含んで、「……釣舟にしておきましょう、その舟のね、表二階の方へ餉台を繋いで、大勢で飲酒ながら遊んでいたんですが、景色は何とも言えないけれど、暑いでしょう。
— 泉鏡花 『浮舟』 青空文庫
――ルウフル(蘭語Rofleの訛)遠き人を呼ぶに、声を通わする器、蘭人の製と伝う。
— ズウフラ怪談 『半七捕物帳』 青空文庫
玉虫 男はもとより源氏方、女は肉身の姉を見すてて、かたきに心を通わす奴、呪いの奇特をためすには屈竟と、最前神酒をとりし時、わが呪いの首尾よく成就するならば、この酒変じて毒となり、まのあたりに二人の命を奪えと、ひそかに念じてすすめたるに、酒は果して毒となった。
— 岡本綺堂 『平家蟹』 青空文庫
手を交互左右に伸ばして樹枝を捉え進み移る状、ちょうど一の臂が縮んで他の臂が伸びる方へ通うと見えるから、猿は臂を通わすてふ旧説あり、一|臂長く一臂短い画が多い。
— 猴に関する伝説 『十二支考』 青空文庫
然るを如何なる用事あるも文を通わす可らずとは、我輩は之を女子の教訓と認めず、天下の奇談として一笑に附し去るのみ。
— 福沢諭吉 『女大学評論』 青空文庫