見遣る
みやる
動詞
標準
文例 · 用例
婦人の意地と、張とのために、勉めて忍びし鬱憤の、幾十倍の勢をもって今満身の血を炙るにぞ、面は蒼ざめ紅の唇|白歯にくいしばりて、ほとんどその身を忘るる折から、見遣る彼方の薄原より丈高き人物|顕れたり。
— 泉鏡花 『琵琶伝』 青空文庫
戸外は立迷う人の足、往来も何となく騒がしく、そよとの風も渡らぬのに、街頭に満ちた露店の灯は、おりおり下さまに靡いて、すわや消えんとしては燃え出づる、その都度|夜商人は愁わしげなる眉を仰向けに打見遣る、大空は雲低く、あたかも漆で固めたよう。
— 泉鏡花 『三枚続』 青空文庫
わっと叫ぶに泰助も驚きて、見遣る座敷の入口に、煙のごとき物体あって、朦朧として漂えり。
— 泉鏡花 『活人形』 青空文庫
さうして何ぞ急な用でも」「急な用が無ければ、お待ち申してをつては悪いので御座いますか」 語気の卒に※きを駭ける貫一は、空く女の顔を見遣るのみ。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫
大袈裟な言葉をのべつ幕無しふんだんに飛び出させる京伝の口を、寧ろ皮肉な眼付きをして、じろじろ見遣るばかりであった。
— 国枝史郎 『戯作者』 青空文庫
己の目の見遣るあそこに、譬えようのないあの姿を、あのままおらせて貰いたい。
— FAUST. EINE TRAGODIE 『ファウスト』 青空文庫
然らば北歐羅巴の方面はどうかと見遣るに、此方面に就ては私は餘り多く知らぬが、要するに幼稚極まるものであつて、規模が極めて小さいやうである。
— 伊東忠太 『妖怪研究』 青空文庫
ふと遠くを見遣ると、対岸でも人垣ができている。
— 澤西祐典 『くじらようかん』 青空文庫