老俳
ろうはい
名詞
標準
文例 · 用例
顔は、老俳優のように端麗である。
— 太宰治 『正義と微笑』 青空文庫
このおじさんは市塵庵春雄と号して、日本橋に在るその庵は、嘗て江戸派の元老俳人で市塵庵四季雄という老人が住まっていたそうですが、歿くなり、その後嗣者となってこのおじさんはお艶と共に彼の弟分の秋雄という弟子を連れて移り住んだのでした。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
」 故人と大の仲よしで、その作物を舞台にかけては、いつも評判をとっていた老俳優の駒十郎は、こんなことを言うのにも、台詞らしい抑揚を忘れなかった。
— 薄田泣菫 『艸木虫魚』 青空文庫
ちやうど初夏のある宵で、何よりも自然の心に触れることの好きなこの老俳人は、小さな獣のやうに竹藪の中の小路をもとめて、そこに入つて往つた。
— 薄田泣菫 『独楽園』 青空文庫
もし今日の演劇界を改良せんとならば、それはむしろ壮士俳優の任務であつて決して老俳優の成し得らるる所ではない。
— 正岡子規 『病牀六尺』 青空文庫
日頃から恭謙の名を得てゐた彼は、一同に軽く会釈をして、芭蕉の枕もとへすりよつたが、そこに横はつてゐた老俳諧師の病みほうけた顔を眺めると、或満足と悔恨との不思議に錯雑した心もちを、嫌でも味はなければならなかつた。
— 芥川龍之介 『枯野抄』 青空文庫
老俳優も若輩の批評家を先生と呼ぶのである。
— 戸坂潤 『所謂批評の「科学性」についての考察』 青空文庫
また舞台を退いた老俳優とか、舞台の収入だけでは生活に余裕のなささうな官吏俳優の内職が、「朗誦」或は「会話」の個人教授であることは周知の事実であつて、これまたフランス語教育の立派な一部門とされてゐる。
— 岸田國士 『演劇統制の重点』 青空文庫