幻辞.com

通り庭

とおりにわ
名詞
1
標準
文例 · 用例
私はその時通り庭の土間を上つた所に立つて、汗を拭き/\、何気なく奥の間の方へ眼をやつたが、手前の部屋との界の葭障子を透して、其処に女が一人寝てゐるのが見えた。
加能作次郎 乳の匂ひ 青空文庫
私は薄暗い通り庭から部屋へ上つて、次の部屋との仕切を開けると、そこに古びた二枚折の屏風が、煤けた、折々剥げ破れた裏を見せて立つて居た。
加能作次郎 世の中へ 青空文庫
その年の夏、私がこの家へ使に来た時に、お君が通り庭の突当りの、離座敷の玄関に、浴衣の裾を膝までまくりあげて、だらしなく腰掛けながら、その前に鉋を砥いで居る、若い大工と笑ひながら話して居たのを見たが、もしかしたらその大工ではないかと思ひもした。
加能作次郎 世の中へ 青空文庫
私もつづいて家の中に入ると、細長い通り庭がまたも一つ、ようよう体の入れるだけの小さい潜戸で仕切られていて、幽かな電燈の火影が表の間の襖ごしに洩れてくるほかは真暗である。
近松秋江 黒髪 青空文庫
私は、うまくしてやったりと心にうなずきながら、つっと内へ入りながら、中から潜戸を閉めておいて狭い通り庭をずっと奥へ進むと、茶の間と表の間との境になっている薄暗い中戸のところに、そこまで客を送り出したものと見えて女がひとりで立っている。
近松秋江 霜凍る宵 青空文庫
母親は通り庭から中の茶の間の前に入ってくると、思いがけなく、火鉢の向うに私が来て坐っているのを見ると、びっくりしてたちまち狂気のようになって怒り出した。
近松秋江 霜凍る宵 青空文庫
そう思い返して時々電話をかけて都合を訊いたり、自分で入口まで出かけて往ったことも一度や二度でなかったが、小面の憎い女衆はよく私の顔を覚えていると思われて、卑下しながら入口に立った私を見ると、わざと素知らぬ振りをして狭い通り庭の奥の方で働いていた。
近松秋江 霜凍る宵 青空文庫
小せんは、通り庭になっている秋草の植えこんであるあたりを、きっと俥から下りると、前座に負われて楽屋入りした。
正岡容 寄席行燈 青空文庫