笹色
ささいろ
名詞
標準
文例 · 用例
窓もやゝ黄昏れて、村里の柿の實も輕くぱら/\と紅の林に紛れて、さま/″\のものの緑も黄色に、藁屋根の樺なるも赤い草に影が沈む、底澄む霧に艶を増して、露もこぼさす、霜も置かず、紅も笹色の粧を凝して、月光に溶けて二葉三葉、たゞ紅の點滴る如く、峯を落ちつつ、淵にも沈まず飜る。
— 泉鏡太郎 『魔法罎』 青空文庫
雑魚寝の女護の島で、宿酔の海豹が恍惚と薄目を開けると、友染を着た鴎のような舞子が二三羽ひらひらと舞込んで、眉を撫でる、鼻を掴む、花簪で頭髪を掻く、と、ふわりと胸へ乗って、掻巻の天鵞絨の襟へ、笹色の唇を持って行くのがある。
— 泉鏡花 『白花の朝顔』 青空文庫
」と柳眉逆立ち、心激して団扇に及ばず、袂の尖で、向うへ払ふと、怪しい虫の消えた後を、姉は袖口で噛んで拭いて遣りながら、同じ針箱の引出から、二つ折、笹色の紅の板。
— 泉鏡花 『蠅を憎む記』 青空文庫
私は聞くとともに、直下の三番町と、見附の土手には松並木がある……大方玉蟲であらう、と信じながら、其の美しい蟲は、顏に、其の玉蟲色笹色に、一寸、口紅をさして居たらしく思つて、悚然とした。
— 泉鏡太郎 『番茶話』 青空文庫
明月院の相手は、羽着きの薄い枯笹色の貧相な鶏で、いくどかの戦いで背中のあたりまで羽毛をむしられ、ぞっとするような赤肌をむきだしているのは悲惨だが、鶏冠を半分以上も剃り落してあるので、頭だけ見ると、鸚鵡のお化けのようで滑稽だった。
— 久生十蘭 『春の山』 青空文庫
唇から付いたんなら、もう少し薄すり付きますが、筒の口は紅が笹色になつてゐるほど付いてるでせう。
— 南蠻祕法箋 『錢形平次捕物控』 青空文庫
藤色の大振袖、曙色にぼかした精巧の袴を着けて、前半に短か刀を一本、顔は、その頃の寺小姓や色子の風俗で、薄化粧をほどこし、笹色の口紅まで差して居りますが、頭は不思議に引っ詰めた一束の下げ髪、こればかりは、全体の派手な調子と相応しません。
— 第三夜 お化け若衆 『新奇談クラブ』 青空文庫
唇から付いたんなら、もう少し薄り付きますが、筒の口は紅が笹色になっているほど付いてるでしょう。
— 南蛮秘法箋 『銭形平次捕物控』 青空文庫