面窶れ
おもやつれ
名詞
標準
文例 · 用例
例の通りで、庭へ入ると、母様は風邪が長引いたので、もう大概は快いが、まだちっと寒気がする肩つきで、寝着の上に、縞の羽織を羽織って、珍らしい櫛巻で、面窶れがした上に、色が抜けるほど白くなって、品の可いのが媚かしい。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
頬のかゝり白々と、中にも、圓髷に結つた其の細面の氣高く品の可い女性の、縺れた鬢の露ばかり、面窶れした横顏を、瞬きもしない雙の瞳に宿した途端に、スーと下りて、板の間で、もの優しく肩が動くと、其の蝋の火が、件の繪襖の穴を覘く……其の火が、洋燈の心の中へ、※と入つて、一つに成つたやうだつた。
— 泉鏡太郎 『霰ふる』 青空文庫
病み臥したのではなかつたから、面窶れもなかつた。
— 島木健作 『續生活の探求』 青空文庫
」 葉子はその時少し熱があって、面窶れがしていたが、子供のこととなると、仔猫を取られまいとする親猫のように、急いで下駄を突っかけて、母屋の方へ駈け出して行った。
— 徳田秋声 『仮装人物』 青空文庫
すると部屋が白々としたころになって、誰かが彼のベッドの端へ来て坐る膝の重さを感じてほっと目がさめたと思うと、面窶れのした葉子が上から彼を覗いていることに気がついた。
— 徳田秋声 『仮装人物』 青空文庫
葉子はどこか面窶れがしていたが、裏が廊下になっている、ちょうど縁側と反対の壁ぎわに延べられた寝床の枕元近くのところで、庸三を警戒するもののように離れて坐っていた。
— 徳田秋声 『仮装人物』 青空文庫
出る前よりも多少面窶れてゐた。
— 夏目漱石 『門』 青空文庫
しかし、面窶れしているあなたにお逢いしても、やはりなんにも話せませんでした。
— 田中英光 『オリンポスの果実』 青空文庫