翹
翹
名詞
標準
文例 · 用例
敷居の外の、苔の生えた内井戸には、いま汲んだような釣瓶の雫、――背戸は桃もただ枝の中に、真黄色に咲いたのは連翹の花であった。
— 泉鏡花 『雛がたり』 青空文庫
復一にはうまいのかまずいのか判らなかったが、連翹の花を距てた母屋から聴えるのびやかな皺嗄声を聴くと、執着の流れを覚束なく棹さす一個の人間がしみじみ憐れに思えた。
— 岡本かの子 『金魚撩乱』 青空文庫
光った数珠の玉は連翹の撓った小枝に溜った氷雨か雫であった。
— 岡本かの子 『褐色の求道』 青空文庫
幹といえば、蒼味がかッた連翹色で、葉といえば、鼠みともつかず緑りともつかず、下手な鉄物細工を見るようで、しかも長いっぱいに頸を引き伸して、大団扇のように空中に立ちはだかッて――どうも虫が好かぬ。
— イワン・ツルゲーネフ Ivan Turgenev 『あいびき』 青空文庫
衣服を見ればことさらに風流をめかしているうちにも、またどことなくしどけないのを飾る気味もあッて、主人の着故るしめく、茶の短い外套をはおり、はしばしを連翹色に染めた、薔薇色の頸巻をまいて、金モールの抹額をつけた黒帽を眉深にかぶッていた。
— イワン・ツルゲーネフ Ivan Turgenev 『あいびき』 青空文庫
次に前夕の目撃せしところに就きて颶風を敍し、岸に臨みて翹望せる婦幼に及び、十字架を落す兒童とこれを拾ひて高く※ぐる漁翁とに及べり。
— IMPROVISATOREN 『即興詩人』 青空文庫
同じであったならそれでよし、若し異っていたら、男性の創り上げた文化と、女性のそれとの正しき抱擁によって、それによってのみ、私達凡ての翹望する文化は成り立つであろう。
— 有島武郎 『惜みなく愛は奪う』 青空文庫
道翹という僧が出迎えて、閭を客間に案内した。
— 森鴎外 『寒山拾得』 青空文庫