引き船
ひきふね
名詞
標準
文例 · 用例
けむりの雲の中を走って行く船は引き船だ」 わたしにとってはなんということばであろう。
— SANS FAMILLE 『家なき子』 青空文庫
引きづなの滑車がぎいぎい鳴って、馬は引き船の道をカッパカッパ歩きだした。
— SANS FAMILLE 『家なき子』 青空文庫
けれど景色がつまらなくなると馬は引き船の道を早足にとっとっとかけた。
— SANS FAMILLE 『家なき子』 青空文庫
二十一 それから一月ばかりと申すものは、何事もなくすぎましたが、やがて夏も真盛りのある日の事、加茂川の水が一段と眩く日の光を照り返して、炎天の川筋には引き舟の往来さえとぎれる頃でございます。
— 芥川龍之介 『邪宗門』 青空文庫
驚くべき芳一の琵琶は、橈を引き舟をぐっと進める音のやうに、火の矢が唸り飛ぶやうに、人々が叫びどたんばたんするやうに、兜に刃が鳴るやうに、殺されたものが海中にぶち落ちる音のやうに響きました。
— 稲垣巖 『父八雲を語る』 青空文庫
田圃を隔てて引舟の通が見える。
— 森鴎外 『ヰタ・セクスアリス』 青空文庫
道夫は又同時に横網町の朝川善庵、薬研堀の萩原|緑野、引舟通の大橋|訥庵にも従遊した。
— 森鴎外 『伊沢蘭軒』 青空文庫
川の中を引舟して行くのや何かを見、こちらは珍しく思った。
— 一九二四年(大正十三年) 『日記』 青空文庫