陰森
いんしん
名詞
標準
文例 · 用例
車百合、稚子百合、白花蛇イチゴ、コケモモ、ゴゼンタチバナ、ヤマオダマキなどが、陰森たる白ビソ、米ツガ、落葉松などの下蔭にうずくまっている。
— 小島烏水 『不尽の高根』 青空文庫
その天空に浮遊するかの如き、嶮にして美なる林道を「天の浮橋」と呼ぶそうであるが、何よりも喬木林の陰森さにおどろかされる。
— 小島烏水 『不尽の高根』 青空文庫
陰森の気|床下より起こりて翁が懐に入りぬ。
— 国木田独歩 『源おじ』 青空文庫
陰森として沈むあたりに、音もせぬ水は唯鱗が動く。
— 泉鏡太郎 『十和田湖』 青空文庫
燕府を挙って殺気|陰森たるに際し、天も亦応ぜるか、時|抑至れるか、然として地に堕ちて粉砕したり。
— 幸田露伴 『運命』 青空文庫
死せる都府の陰森の氣は、光明に宜しからずして幽暗に宜しければなり。
— IMPROVISATOREN 『即興詩人』 青空文庫
桑名夜となりぬ、神世に通ふやすらひに早や門鎖す古伊勢の桑名の街は路も狭に高き屋づくり音もなく、陰森として物の隈ひろごるにほひ。
— 北原白秋 『邪宗門』 青空文庫
買物らしい買物はたいてい神楽坂まで出る例になっていたので、そうした必要に馴らされた私に、さした苦痛のあるはずもなかったが、それでも矢来の坂を上って酒井様の火の見櫓を通り越して寺町へ出ようという、あの五六町の一筋道などになると、昼でも陰森として、大空が曇ったように始終薄暗かった。
— 夏目漱石 『硝子戸の中』 青空文庫