紛
紛
名詞
標準
文例 · 用例
お互に気のない風はしていても、手にせわしい仕事のあるばかりに、とにかく思い紛らすことが出来た。
— 伊藤左千夫 『野菊の墓』 青空文庫
多くの人中に居ればどうにか紛れるので、日の中はなるたけ一人で居ない様に心掛けて居た。
— 伊藤左千夫 『野菊の墓』 青空文庫
そういう訣であるから、学校へ往っても以前とは殆ど反対になって、以前は勉めて人中へ這入って、苦悶を紛らそうとしたけれど、今度はなるべく人を避けて、一人で民子の上に思いを馳せて楽しんで居った。
— 伊藤左千夫 『野菊の墓』 青空文庫
それ位の例外でありますからして、これらの例外があるということは、二類の区別があるということを否定するものではなく、全体としてやはり区別がある、ただどうかして多少|紛れたものがあるというだけのことであろうと思います。
— 橋本進吉 『古代国語の音韻に就いて』 青空文庫
その紛れたのは、今我々の見ることの出来る古典においてそうでありましても、あるいはそれは古く起った写し違いというようなものであるかも知れませぬ。
— 橋本進吉 『古代国語の音韻に就いて』 青空文庫
私はそれが厭だつたので、白線の上に赤インキを塗りつけたり、真紅色の上に紫絵具をこすつたりして、無理に一高の帽子に紛らして居た。
— 萩原朔太郎 『夏帽子』 青空文庫
もちろんその黒猫は、彼女のいない留守の間に、他所から紛れ込んだものに相違なかった。
— 萩原朔太郎 『ウォーソン夫人の黒猫』 青空文庫
そんなはけ口のない情慾を紛らすために、僕らは牛肉屋へ行って酒をあおり、肉を手掴みにして壁に投げつけたり、デタラメの詩吟を唄って、往来を大声で怒鳴り歩いたりした。
— 萩原朔太郎 『老年と人生』 青空文庫