顔合
かおあい
名詞
標準
文例 · 用例
解ってはいるけど、わざと戯れの様に聞きなして、振りかえって見ると、民子は真に考え込んでいる様であったが、僕と顔合せて極りわるげににわかに側を向いた。
— 伊藤左千夫 『野菊の墓』 青空文庫
一芸に達した男同志――それにいくらか気持のふくみもあるような――初対面を私は名優の舞台の顔合せを見るように黙って見て居た。
— 岡本かの子 『鶴は病みき』 青空文庫
「あんさんのお父つぁんに都合が悪うて、私は顔合わされしまへんがな」柳吉は別に異を樹てなかった。
— 織田作之助 『夫婦善哉』 青空文庫
四 土屋の家では、省作に対するおとよの噂も、いつのまにか消えたので大いに安心していたところ、今度省作が深田から離縁されて、それも元はおとよとの関係からであると評判され、二人の噂は再び近村|界隈の話し草になったので、家じゅう顔合せて弱ってる。
— 伊藤左千夫 『春の潮』 青空文庫
もう中日はすぎていたが、団十郎と上方くだりの女形、上村吉三郎の顔合せが珍しいところへ、出しものの狂言そのものが団十郎自作というところから、人気に人気をあおって、まこと文字通り大入り大繁昌でした。
— 千代田城へ乗り込んだ退屈男 『旗本退屈男 第十一話』 青空文庫
勝手に顔合わせしちまったんだな」「見りゃ、わかるでしょうに」「おまえが遅刻するから、おれの計画が狂ったじゃないか。
— 第3章 フルサークル、1991年 『45回転の夏』 青空文庫
九日は帝国芸術院会員が初度の顔合せというので、私も文相からの案内を受けて、一旦は出席の返事を出しておきながら、更にそれを取消して、当夜はついに失礼することになった。
— 岡本綺堂 『綺堂むかし語り』 青空文庫
殊に大晏寺堤は団菊左の顔合わせで、開幕前の噂はなかなか高かったが、さて初日を出してみると客足が思わしからず、通し狂言の「安中草三」も在来の円朝物ほどに面白くないと云う不評で、この興行はさんざんの失敗に終わった。
— 岡本綺堂 『寄席と芝居と』 青空文庫