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文殻

ふみがら
名詞
1
標準
文例 · 用例
この筆法をもってすれば、情婦から来た文殻が紛込んだというので、紙屑買を追懸けて、慌てて盗賊と怒鳴り兼ねまい。
泉鏡花 婦系図 青空文庫
手文庫には文殻とノートがぎっしり詰っていた。
夏目漱石 道草 青空文庫
そのままに専と思入るのみなりし貫一も、漸く悩く覚えて身動ぐとともに、この文殻の埓無き様を見て、やや慌てたりげに左肩より垂れたるを取りて二つに引裂きつ。
尾崎紅葉 金色夜叉 青空文庫
あの人はこの前と同じように封をきって、やはり一分間足らずで読みおわって、机の上へ文殻を投げ出し、それから巻|煙草に火をつけた。
――ある女の日記―― オパール色の手紙 青空文庫
一間に閉じこもって破れて落ちる文殻を綴り合わせているどころの話ではなく、彼は毎日のように顎髯をしごき乍ら、赤耀館へ憎々しい姿を現わしました。
海野十三 赤耀館事件の真相 青空文庫
悪人でも連添う夫婦の情で死のうという心になるお蘭の志を考えると、山三郎は憫れさに堪えられず、暫くの間|文殻を繰返し/\読んで考えて居りました。
侠骨今に馨く賊胆猶お腥し 松の操美人の生埋 青空文庫
電話も今明日中には通ずべきはづ芝○○番に御座候由|御面倒ながら貴答に接するを得ば幸甚々々彩牋堂主人金阜先生|碩北二伸  かの六畳|土庇のざしき太鼓張襖紙思案につき候まゝ先年さる江戸座の宗匠より売付けられ候文化時代|吉原遊女の文殻反古張に致候処|妾宅には案外の思付に見え申候。
永井荷風 雨瀟瀟 青空文庫
母も恐らくは新町の館でこの文を受け取った時、やはり自分が今したようにこれを肌身につけ、押し戴いたであろうことを思えば、「昔の人の袖の香ぞする」その文殻は、彼には二重に床しくも貴い形見であった。
谷崎潤一郎 吉野葛 青空文庫