裏小路
うらこうじ
名詞
標準
文例 · 用例
通道というでもなし、花はこの近処に名所さえあるから、わざとこんな裏小路を捜るものはない。
— 泉鏡花 『絵本の春』 青空文庫
若い時から、諸所を漂泊った果に、その頃、やっと落着いて、川の裏小路に二階|借した小僧の叔母にあたる年寄がある。
— 泉鏡花 『絵本の春』 青空文庫
……」 大通りは一筋だが、道に迷うのも一興で、そこともなく、裏小路へ紛れ込んで、低い土塀から瓜、茄子の畠の覗かれる、荒れ寂れた邸町を一人で通って、まるっきり人に行合わず。
— 泉鏡花 『伯爵の釵』 青空文庫
三光町の裏小路、ごまごまとした中を、同じ場末の、麻布田島町へ続く、炭団を干した薪屋の露地で、下駄の歯入れがコツコツと行るのを見ながら、二三人共同栓に集った、かみさん一人、これを聞いて、「何だい、その言種は、活動写真のかい、おい。
— 泉鏡花 『白金之絵図』 青空文庫
しかし雛妓にはそんな様子もなくて、頻りに家の中を見廻して、くくみ笑いをしながら、「洒落てるけど、案外小っちゃなお家ね」 と言って、天井の板の柾目を仰いだり、裏小路に向く欄干に手をかけて、直ぐ向い側の小学校の夏季休暇で生徒のいない窓を眺めたりした。
— 岡本かの子 『雛妓』 青空文庫
……」 大通りは一筋だが、道に迷ふのも一興で、其処ともなく、裏小路へ紛れ込んで、低い土塀から瓜、茄子の畠の覗かれる、荒れ寂れた邸町を一人で通つて、まるつ切人に行合はず。
— 泉鏡花 『伯爵の釵』 青空文庫
大またにすたすたと裏小路へ抜けて、金看板のむっつりぶりもあざやかに、一路目ざした方角がまたじつに意外でした。
— 献上博多人形 『右門捕物帖』 青空文庫
叱る声、泣く声、怒る声、笑ふ声、――市井の間にゐることを痛感する、裏小路だなあと思ふ。
— 種田山頭火 『其中日記』 青空文庫